開発工程を別々に担当してはいけない というblogエントリを見かけて違和感を覚えたので少々。
該当エントリを読んでもらうのが一番なのですが、概略として指摘事項は、
- ウォーターフォールモデルでは工程別で担当を分ける場合に生成されるドキュメントが膨大になり多くの工数を消費する
- プロトタイピングのような手法が用いにくく、手戻りの工数が大きい。
- 個別のパーツの製造者は仕様に従って製造するだけで責任を果たせるため、最終的なプロダクトの利便性などを気に留める必要がない。
- 上流~下流の各工程に下請け発注の産業構造が重なり、下流は単価が安く利益にならない。
といった点を上げ、作業を分担するという方法が諸悪の根源ではないか、と主張されているわけです。
複数の議論を内包する議題は、議論の抽出を行うべき
該当のエントリでは、非常に多くの議題を内包しています。
- 工程分離によって生産性が高くなるのか、低くなるのか
- 工程の分離と下請け構造との対応付けの是非
- 工程の分離による最終的なプロダクトの品質への影響
- 下請け発注型の産業構造での収益性
分業と収益については、以前に「 プログラミングの効率と経済」という稿でバベッジの原理に基づいて話したことがあります。
これは工業的流れ作業での分業と賃金との関連の話になってしまいますが、こういった議論にも、実務に取り入れようとするならば、工程の分離の是非が問われてくる。
工程分離における生産性の向上の是非は、担当者の熟練の速度、調達可能性、分離によって発生するオーバーヘッド、また、分離によって仕様の明確化が必須となることの効能、そういったものを含めて考える必要があり、簡単な問題ではない。
個々に複雑なテーマを含んでいますが、整理されていないため論理の飛躍を感じてしまいます。
収益性の問題は契約方法の問題
以前、私のエントリで「IT業界の給与形態はどうあるべきか」というシリーズ( 1、 2、 3 )をやったのですが、 最終回のまとめ で以下のように指摘しています。
その2ではIT業界の会社間の契約で頭数x時間による派遣労働型の契約が多いことを挙げ、その場合にやはり労働の牛歩戦術が利益向上の最適な戦略になってしまうことを示しました。また、そのような形態で仕事を請け負っている会社としては技術者の腕はあまり利益にならないことを挙げ、派遣型IT企業は技術を欲しないことを指摘しました。
つまり、単価の是非ではなく、生産性の向上が収益に結びつかない契約形態(頭数×単価という契約)が問題なのです。1人月相当の作業がたとえ20万だろうが、5人月相当の生産性を確保して、100万もらえるなら困らないのです。
しかし、一人の人間を拘束して20万という契約だとやってられない。単価そのものが問題なのではなく、 拘束した頭数に対しての金額であるところが大問題なわけです。
ここは論点を誤っているように思います。
投稿日時 : 2007年10月25日 13:33