もし、あなたがこれから10年間、土砂を運搬する仕事をするとしたならば、次のどの道具に投資しますか?
- 手押し車 (10,000円~)
- 軽トラック (500,000円~。最大積載量は350kg以下)
- 中型トラック (ダンプで1,500,000円~。最大積載量は6.5トン未満)
- 大型トラック (10tダンプで10,000,000円~。)
多くの人は4を選ぶのではないでしょうか。あるいは大型免許を保持していない人は3を検討するかもしれません。
道具というのは仕事の効率に直結します。土木建設業などでは機械による効率化が目に見えてわかるため、
機械への投資とそのリターンが想像しやすいですね。
開発マシンを変えたなら
以前のプロジェクトで契約先会社から支給されたマシンで開発していたのですが、
Tomcat(JavaEEの実行環境であるWebサーバ)の起動に300秒以上かかっていました。
プログラムを修正し、コンパイルしてテストを再開するたびに5分待たされるわけです。
10箇所修正するとそれだけで50分、1日の業務の10%がこの待ち時間で費やされていたわけです。
そこで、DELLでCore2Duo搭載でメモリが2Gのマシンを12万程度で購入し、持ち込むことにしました。
これによって、Tomcatの起動時間は20秒程度にまで短縮されました。
システム開発において、Webサーバの疑似環境の起動や、DBの起動、コンパイルといった処理には
かなりのマシンパワーが求められます。
また、Eclipseといった最近の高度なIDEはそれ自体が相当にマシンパワーを要求します。
もっとも、クラス名・メソッド名などの自動補完や、構文解析を伴う高度なシンタックスハイライト、
コード記述中の動的コンパイルやバグパターンの検出機能、リファクタリング機能や命名規約のチェックなど、
生産性向上のための多様な高度な機能が盛り込まれているため、
「テキストエディタで開発すれば?」というわけにはいきません。生産性が違いすぎます。
さて、先に挙げたように土砂運搬の例だと投資額が1000万円とかになるわけですね。
耐用年数が10年だとしても年間100万円、これに重量税や車検といった費用がかかります。
人件費側を保険等の諸経費も込みでひとりあたり50万円/月と仮定した場合、年間600万円で
その20%ぐらいの比率で機械への投資が必要だと言うことになります。
しかし、それで4tから10tに切り替えたら一度に運べる量は+150%になるわけで、
仕事のためにこの金額を投資しようと考えるのが一般的です。
開発に使うマシンの場合はどうでしょうか。先に挙げたとおり、私が今開発で使っているマシンは12万円です。
この12万円にはWindowsVistaとMSOfficeのライセンス料も含まれています。
耐用年数を2年としても、年間6万円です。わずかに人件費の1%です。
そして、こまごまとしたマシンフリーズや起動待ちから解放されて+20%程度の作業効率アップができるわけです。
開発マシンに投資しよう
マシンが古いと正に「仕事にならない」という事態が発生します。しかし、その仕事上での困り具合というのが
どうにも見えにくいというのもIT業界の特徴です。
Webでもそうですが、通信を行うシステムではマシンが物理的に複数台あるほうが効率が良いこともあります。
1台のマシンに仮想環境を作って疑似的に2台にするとかいうこともできますが、その手間とかマシンパワーの
負担による待ち時間の発生とか考えたらマシンへの投資をケチってトータルで得をするでしょうか?
IT業界は人件費の比率が突出して高い業界です。
人を活かすためのマシンへの1%程度の投資額なんざ、あっというまに回収できるわけです。
しかし、積載量が倍になれば運搬効率二倍だね、なんてイメージのしやすさに比べ、
IT業界での仕事効率は見えにくい。ですから、経営者や、経理の人には
「マシンを2年じゃなくて4年使えば経費を50%カット♪」
ぐらいに思われている可能性があります。その代償としてどれだけの人件費が無駄になっているか、
どれだけ技術者のモチベーションを下げているかをちゃんと伝えなければなりません。
投稿日時 : 2008年7月3日 0:51