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Oriental Code Talk ── επιστημηが与太をこく、弾幕とは無縁のシロモノ。

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右辺地産地消(違)のサンプル

R-value reference  のつづき。

 

先だってのエントリ、正確さに欠ける言い回しがあったかな。

R-value reference / move semantics は、右辺値からそのナカミをmoveする機能じゃありません。

右辺値であればそれは一時オブジェクトであり、いずれ捨てられる運命。

ならば右辺値からナカミをひっぺがして使える。

そのためには、もらった引数が右辺値であることが識別できるからくりが言語レベルで必要。

右辺値を T&& にmatchさせて関数を呼び分けてあげよう。

ってゆースンポーです。実際にナカミをひっぺがすのはプログラマのお仕事。言語サイドではナカミをひっぺがす、つまり移動(move)可能ってゆー意味(semantics)を伴って呼び出されたことをプログラマに教えてあげるカラクリを用意してくれた。ってーのが右辺値参照の意味となりますか。

んでもって右辺値参照のサンプル、ショボい文字列 shobostr をこしらえてみんとす。

 
#include <iostream> // cout,err
#include <utility>  // move
#include <cstring>  // strほげほげ()

using namespace std;


// ショボい文字列
class shobostr {
private:
  char* body;
public:
  // デフォルト コンストラクタ
  shobostr() : body(nullptr) { cerr << "ctor()\n"; }
  // C文字列を食うコンストラクタ
  shobostr(const char* cstr) {
    cerr << "ctor(const char*)\n";
    body = new char[strlen(cstr)+1];
    strcpy(body,cstr);
  }
  // コピー コンストラクタ
  shobostr(const shobostr& ss) {
    cerr << "ctor(const shobostr&)\n";
    body = new char[strlen(ss.body)+1];
    strcpy(body,ss.body);
  }
#ifdef RVR
  // 右辺値参照 コンストラクタ
  shobostr(shobostr&& rvr) {
    cerr << "ctor(shobostr&&)\n";
    body = rvr.body; // 引数から引き剥がすよ
    rvr.body = nullptr;
  }
#endif
  // デストラクタ
  ~shobostr() {
    cerr << "dtor() for " << (body ? body : "(null)") << '\n';
    delete[] body;
  }
  // C文字列を代入
  shobostr& operator=(const char* cstr) {
    cerr << "operator=(const char*)\n";
    delete[] body;
    body = new char[strlen(cstr)+1];
    strcpy(body,cstr);
    return *this;
  }
  // コピー
  shobostr& operator=(const shobostr& ss) {
    cerr << "operator=(const shobostr&)\n";
    if ( &ss != this ) {
      delete[] body;
      body = new char[strlen(ss.body)+1];
      strcpy(body,ss.body);
    }
    return *this;
  }
#ifdef RVR
  // 右辺値参照 コピー
  shobostr& operator=(shobostr&& rvr) {
    cerr << "operator=(const shobostr&)\n";
    if ( &rvr != this ) {
      delete[] body;
      body = rvr.body; // 右辺から引き剥がすよ
      rvr.body = nullptr;
    }
    return *this;
  }
#endif
  // 連結
  friend shobostr operator+(const shobostr& lhs, const shobostr& rhs) {
    cerr << "operator+(const shobostr&,const shobostr&)\n";
    shobostr result;
    result.body = new char[strlen(lhs.body)+strlen(rhs.body)+1];
    strcpy(result.body, lhs.body);
    strcat(result.body, rhs.body);
    return result;
  }
};


// こっからおためし
int main() {
  shobostr s0("Hello,");
  shobostr s1("world");
  shobostr s2(s0+s1);
}

 

実行結果:

--- RVR disabled ---

ctor(const char*)

ctor(const char*)

operator+(const shobostr&,const shobostr&)

ctor()

ctor(const shobostr&) s2:コピーコンストラクタ

dtor() for Hello,world +の結果を捨ててるMOTTAINAIトコ

dtor() for Hello,world

dtor() for world

dtor() for Hello,

 

--- RVR enabled ---

ctor(const char*)

ctor(const char*)

operator+(const shobostr&,const shobostr&)

ctor()

ctor(shobostr&&) s2: 右辺値参照版 コピーコンストラクタ

dtor() for (null) operator+の戻り値からbodyが移動してゆー

dtor() for Hello,world

dtor() for world

dtor() for Hello,

 

投稿日時 : 2010年8月6日 20:07

コメントを追加

# re: 右辺地産地消(違)のサンプル 2010/08/07 2:54 出水

shobostr& operator=(shobostr&& rvr);
これが必要な理由がわからないんですが、なぜ必要なんでしょう?
実際にやってみたら、この定義がないと右辺値参照には対応しないのに、
この関数の内部は全く通ってませんよね…??

# re: 右辺地産地消(違)のサンプル 2010/08/07 7:17 επιστημη

え? んなことないよ。右辺値参照コンストラクタさえあれば上の例には十分。

# re: 右辺地産地消(違)のサンプル 2010/08/07 8:09 Chiharu

手元の VC2010Exp だとRelease ビルドでムーブ コンストラクタが起動しないようです。(RVR 定義済

-- VC2010Exp(Release) ---
ctor(const char*)
ctor(const char*)
operator+(const shobostr&,const shobostr&)
ctor()
dtor() for Hello,world
dtor() for world
dtor() for Hello,

Debug ビルドだと RVR enabled ログが出てるので…、コンパイラの最適化ってすごい…てこと?

標準出力という副作用を含むコンストラクタなのに、想定とは違うバージョンが呼ばれるのって、ちょっと意外でした。

# re: 右辺地産地消(違)のサンプル 2010/08/07 8:16 Chiharu

あ。間違えました。すみません。

想定とは違うバージョンではなく、ムーブコンストラクタに起因する一連のメソッド呼び出しがキャンセルされてるってことですね。でも、RVR 定義あってもなくてもキャンセルされてます。

加算演算子のオーバーロードで NVRO が効いたんでしょうか。

# re: 右辺地産地消(違)のサンプル 2010/08/07 9:19 επιστημη

あんや?
僕はコマンドラインから cl -EHsc -DRVR xxxx.cpp してるだけなんだども。
最適化オプションの相違によるものですかねぇ...

# re: 右辺地産地消(違)のサンプル 2010/08/07 9:55 Chiharu

cl 実行時のコマンドライン引数に /O2 つけるとそれなりに最適化が有効になります。

コンパイラ最適化で RVO や NVRO が有効になると、メソッドの戻り値に関する代入先のコピー コンストラクタの起動が省略されるので、同様にしてムーブ コンストラクタも省略されたのだと思います。

右辺値参照を解説する際は、最適化目的のコードは鬼門かも、と思います。既存の『戻り値に関する最適化』が優先して適用された後の『右辺値参照の適用』になるようですので。

# re: 右辺地産地消(違)のサンプル 2010/08/07 10:44 επιστημη

> 鬼門

最適化に先に食われてせっかくのT&&なコードを通りそこねちゃうですね。

# re: 右辺地産地消(違)のサンプル 2010/08/07 11:52 επιστημη

最適化オプションによって挙動が異なるのはヤです。
せめて「最適化のせいでRVRなコードを端折った」とwarning/error吐いておくれよぉ

ってConnectに投げときました。
賛同いただけるかた、voteしてくだちぃ。
https://connect.microsoft.com/VisualStudioJapan/feedback/details/584141/c-r-value-reference-move-semantics-ignored-from-optimized-code

# re: 右辺地産地消(違)のサンプル 2010/08/07 13:12 Chiharu

んー。戻り値の最適化で、コンストラクタの起動回数を処理系の裁量で削減してよい、ってことは C++ の言語仕様になってたはずなので、一概にコンパイラのせいにもできない気がします。

# re: 右辺地産地消(違)のサンプル 2010/08/07 13:34 επιστημη

んー。とはいえ意図した挙動を示さんからにはヒトコトあってしかるべきと思うわぁ。

# re: 右辺地産地消(違)のサンプル 2010/08/07 13:35 出水

なるほど~
最適化のせいで右辺値参照できてないんですか~
最適化ってことはそっちの方が速いのかしら

# re: 右辺地産地消(違)のサンプル 2010/08/07 14:21 επιστημη

> ってことはそっちの方が速い
shobostr s2(s0+s1) のとこで、s0+s1で作られた一時オブジェクトをそのまんまs2に転用してるポいすね。
んだから一時オブジェクトのデストラクタとs2のコピー・コンストラクタが動いてない。
move-semanticsをコンパイラが先取り/横取りしてるですか。
そらやっぱ、速いんちゃうの?

# re: 右辺地産地消(違)のサンプル 2010/08/07 14:37 Chiharu

NVRO によりムーブ コンストラクタが『キャンセル』されているので速いと思います。

最適化抑制ってわけじゃないですが…、
前: shobostr s2(s0+s1);
後: shobostr s2(std::move(s0+s1));
と変更すると最適化有効でもムーブ コンストラクタが呼ばれます。明示的に std::move 使うとコンパイラも気を使うんでしょうかね。

# re: 右辺地産地消(違)のサンプル 2010/08/07 14:38 Chiharu

あ。すみません。またちょんぼです。
NRVO (Named Return Value Optimization) ですね。

# re: 右辺地産地消(違)のサンプル 2010/08/07 14:38 επιστημη

コンパイラいぢめ:

shobostr に friend class damestr; を追加し、

class damestr {
 char* body;
public:
 damestr(shobostr&& rvr) {
  cerr << "damestr.ctor(shobostr&&)\n";
  body = rvr.body; // 引数から引き剥がすよ
  rvr.body = nullptr;
 }
 ~damestr() {
  cerr << "damestr.dtor() for " << (body ? body : "(null)") << '\n';
  delete[] body;
 }
};

// こっからおためし
int main() {
 shobostr s0("Hello,");
 shobostr s1("world");
 damestr s2(s0+s1); // shobostr改めdamestr
}

non-optimizeだと
ctor(const char*)
ctor(const char*)
operator+(const shobostr&,const shobostr&)
ctor()
ctor(const shobostr&)
dtor() for Hello,world
damestr.ctor(shobostr&&)
dtor() for (null)
damestr.dtor() for Hello,world
dtor() for world
dtor() for Hello,

-O2 optimize だと
ctor(const char*)
ctor(const char*)
operator+(const shobostr&,const shobostr&)
ctor()
damestr.ctor(shobostr&&)
dtor() for (null)
damestr.dtor() for Hello,world
dtor() for world
dtor() for Hello,

最適化によって 「operator+が戻り値を返す際にコピーコンストラクトで戻り値こさえて関数内のをデストラクト」って部分が省略されちょります。
このケースだと右辺値参照は有効、と。

きょうびのコンパイラ、賢いねー

# re: 右辺地産地消(違)のサンプル 2010/08/07 15:01 επιστημη

...おや?

int main() {
 shobostr s0("Hello,");
 shobostr s1(s0);
 shobostr s2(std::move(s0)); // むりくりひっぺがし
}

ctor(const char*)
ctor(const shobostr&)
ctor(const shobostr&) ← あるぇ?
dtor() for Hello,
dtor() for Hello,
dtor() for Hello, ← 効いてないよ?

shobostr s2((shobostr&&)s0);
でも右辺値参照にならなんだ。

コンパイラのバグ? Connect送り?

# re: 右辺地産地消(違)のサンプル 2010/08/07 15:10 Chiharu

右辺値参照。いたるところで難しいといわれているだけありますね。
言語設計的な指針は良くわかりませんが、プログラマ目線で見たら…、

・最適化目的としては NRVO, RVO でフォローしきれないコピー抑制の最後の砦。
・表現力の向上という意味では、コピー不可で移動のみをサポートするオブジェクトの記述。

ってとこでしょうか。んー。奥深いです。

# re: 右辺地産地消(違)のサンプル 2010/08/07 15:41 Chiharu

>コンパイラのバグ?
こちらで cl rvr.cpp /O2 /DRVR /EHsc でコンパイルしましたが、ちゃんとムーブ コンストラクタ来てますよ。
/DRVR を付け忘れているとか?

# re: 右辺地産地消(違)のサンプル 2010/08/07 16:08 επιστημη

あれ? あれ?

ctor(const char*)
ctor(const shobostr&)
ctor(shobostr&&)
dtor() for Hello,
dtor() for Hello,
dtor() for (null)

あ、ホントだ。忘れてたかな^^;

# re: 右辺地産地消(違)のサンプル 2010/08/14 23:56 名無し

Connectに投げるならバグじゃなくて提案だろうに

# re: 右辺地産地消(違)のサンプル 2010/08/15 8:43 επιστημη

いや、あたしゃバグだと考えますね。
ReleaseとDebugで動作が異なる。
本番(Release)では通らないパスができる。

# re: 右辺地産地消(違)のサンプル 2010/08/20 15:24 アンテッ子

12.8.34 に
特定の条件が満たされれば
side effect があっても、
destruction が起きる時が
最適化されなかった時と同じ時より遅く起きれば、
copy/move construnction は省略可能
とあって、
以下にその状況が4つありますよね。

# [C++]右辺値参照の限界点 2010/08/21 11:14 Garbage Collection

[C++]右辺値参照の限界点

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