中国の光
もうすぐオリンピックが開催される北京へ GW に行ってきた。中国の五一黄金週間(メーデー)があるので、日本の GW 期間は中国人もお休み。そのおかげで「中華の人口を舐めてはいけない」という事を思い知らされるのであった。
北京空港に着いて早速発見したのがこれ。「SQL Server 2005」の広告。空港に貼って誰にアピールしているのだろうか。
ホテルに着くと、フロントで
「すみません。部屋、用意できない」
と流暢な日本語で言われる。いきなりトラブルか!?と思いきや、1時間程してからまた着てくれという事(たぶん掃除中だったのだろう)。開口一番「部屋用意できない」はやめてほしい。心臓に悪い。
「じゃ、荷物を預かっててくれ」
と別のボーイに言うと、
「OK。ところで、お前ら、明日は万里の長城に行くのか?」
と今度は英語で言われる。
「そうだ」
と答えると
「600 RMB でタクシーをチャーターしてやるぞ」
と言われた。RMB って何だ?ボーイは地図を出してきて何かいろいろ説明してきているのだが「RMB」の正体が分からない。
「RMB って何だ?」
と私が訊くと「うんちゃらかんちゃら」と急に中国語なのか英語なのか分からない言葉が出てきて、私が意味不明という顔をしていると
「日本語が分かるスタッフを出してやる」
と電話を出されて日本語スタッフと交渉。
「600 元で丸一日タクシーをチャーターできる。万里の長城と十三陵に連れて行く」
RMB って元の事か。勉強不足だった。
「それは二人の合計?他には?」
「高速料金は別でもらう」
「で、結局全部でナンボ?」
「ナンボ?」
しまった。つい関西弁で言ってしまった。
「全部でいくら?」
「いくら?何がいくら?」
あ~、めんどくせぇ!
「結局、全部でお金いくら?」
「二人で 600 元と高速代60元ぐらいね」
「OK。じゃ、それお願い」
という具合にいきなり商売されてしまった。商魂逞しい。600元は安いのか?高いのか?
一日目はホテル周辺を散策する事にした。映画館発見。中国のスパイダーマンは「蜘蛛侠」。そのまんまですな。ちなみに右に写っているのは赤の他人。
中国の水道水は鉱物性が高いので、飲むと腹を壊す。水は買って飲むのが常識。スーパーで買ったら 1 元(※1)。Qoo も売ってた。中国ではみんな水を持ち歩いている。
レジのオバチャンは超不愛想。何も喋らないし、お釣りは「ポイッ」とレジに投げ捨てられる。中国の店員さんは不愛想なのがデフォルトである。飯を食いに行った時は、店員のおばちゃんが普通に寝てたので激写してやった。
日本のファーストフード連発。KFC、マクド。吉牛。日本製は吉牛だけか。吉牛はなんかオシャレだ。


ついでに、マクドのような看板。完全にパクリ。
ホテル傍の土産屋を見ていると、店のオバチャンががっつり喰いついてきた。日本語ペラペラだ。
「ハシ。どう?」
と、お箸のセットを見せてきた。
「ハウマッチ?」
と私が訊くと
「本当は180元のところ120元」
とかなりふっかけてきた。
「じゃあ、イラネ」
と、店を立ち去ると(最初から買うつもりはないのだが)、後ろから大声で
「100元!」
後ろ手で手を振って「いらない」とサインすると
「80元!50元!!」
とドンドン下がっていった。どんだけぼったくるつもりだったのか(結局買わなかったが)。「どんだけ~っ」と言っておいた。
北京と言えば北京ダック。有名店(らしい)「全聚徳」で北京ダックを喰らう。よく分からんのでコースを注文。二人で約 600 元。この辺りから金銭感覚がよく分からなくなってきた。北京ダック以外の料理は不味かった。北京ダックは超美味!旨すぎる。が、丸々1羽は明らかに多い。…と周りのテーブルを見渡せば、同じような量を軽々と喰らっている。中国人はどんな胃袋してるんだ?早々にギブアップした。勿体無かった。

北京ダックの店を出た後、浮かれて店の前で記念撮影をしていると、いきなり背中をドーンっと叩かれる。なんだー?と思って振り返ると、デカ目のオッサン外国人が3人。しかも酔っ払っている。
「Hey! あじょええjrふぁおじょえあ」
何を言っているのか分からない。
「え?」
と私が言うと
「君たちは中国人か?」
と英語で言われたので
「いや、日本人だ」
と返した。
「オ~!ジャパン。トウキョウ?」
「いや、大阪だ」
「オ~!オオサカ。ワッハッハッハ。我々はイスラエルから来たんだ」
と何か嬉しそう。すると3人の内の1人が
「我々は、ジューシーピープルなんだよ」
と言っていた。ジューシーピープル??何か意味が分らんが、取り敢えず笑っておいた。気さくなオッサン達だった。
二日目は朝から万里の長城へ向かう。前日に交渉しておいたタクシーがホテル前にいるのでそれの乗り込む。運転手は中国語しか話せないのでツライ。万里の頂上に到着するまで、私は後ろの座席で殆ど寝ていた。
中国の交通はルール無用。「路肩って何?」と言わんばかりに高速の路肩をバンバン走る。それどころか、一般道路では反対車線もバンバン使う。チャリンコも多い。
メーデーのおかげで中国全土から人が集まっているので、万里の長城付近はとんでもない人口密度に。人人人人…。あまりの混雑に、タクシーのオッサンが痺れを切らして
「ここで待ってるから、ここで車を降りて行ってきてくれ」
というような事を言ってきた(中国語だから分からない)。私は中国語のガイドブックをひっぱり出して
「何時にここに戻ってきたらいいんだ?」
と訊いた。
「何時でもいいよ!」
と言っているような気がした。とりあえず、万里の長城へ向かう。
非常にいい天気で日射病になりそうなので、帽子がほしいと思っていたら、ちょうど帽子を売っているオバチャンが。早速日本語で声をかけられる。
「帽子、30元」
相場が分らないので、高いのか安いのか分らない。でも、高く言われている気がする。
「いらん」
と私が言うと
「10元」
と 1/3 になったので、10元で帽子を購入。ダサい帽子だ…。
万里の長城に向かう道すがらは、あちこちで水を売っている。そして、更に目についたのが何故かキュウリ。キュウリをやたら売っているし、やたらと売れている。歩きながらキュウリをかじっている人多数。中国ではキュウリがブームなのだろうか。後で食ってみようと考えていたが、あるシーンを目撃したせいで結局やめた。
万里の長城入口付近でトイレに。中国のトイレは汚いと聞いていたのである程度覚悟して戦場へ向かった。トイレの入口でお金を取られる。5 角(※2)だ。トイレでお金を取るところがあるとは聞いていたが本当にあったとは。「くせぇっ!」トイレに入った瞬間叫んだ。人がウジャウジャ密集している上に掃除は一切していないと思われる。トイレに入った瞬間、本気で吐きそうになった。吐き気を我慢し、呼吸を止めながら用を足してダッシュでトイレを出た。
洗面台も汚い。手を洗うと逆に手が汚れそう。横を見ると、大量のキュウリを洗っているオッチャンが。「ここでキュウリを洗って売ってんの~?」キュウリを食う気は失せた。
万里の長城入口で 45 元払って、いざ入場。「すげぇっ!……人」。ちょっと引くぐらい人がいる。下の写真で、長城の上に見える色がついているのは全部人。しかし、なかなか感動した。万里の長城でけぇっ!!
ホテルへ帰り、夜は屋台みたいなものがやたらと並んでいる場所へ。サソリや蝉の幼虫の串焼きなんかが売っている。食わんかったが。なんか店の屋根で京劇みたいのやってるんですけど。ここも人が多くてごっちゃごちゃ。買って買って売って売って。わけが分からなくなってるがオモロイ。
三日目。まぁ中国に来たらアレは見とかんとあかんね。そう毛沢東サマです。天安門です。でも、ココはあまり面白くないので長居しないで、足ツボマッサージに向かった。
地下鉄へ。北京の切符はしょぼい。ただの紙だ。自動切符販売機も自動改札もないから、中国語で行き先を言わないとだめ。
足ツボマッサージの店は路地裏にある。その名も「漢方州」。全然人がいない上に、何か怪しい建物。入るのにちょっとびびる。
めっちゃ癒されて殆ど寝てしまったので、内部の写真はあまりない。一人 150 元だったのだが、何故か何も言わないのに 100 元ちょいにまけてくれた。だから宣伝しておく。北京へ行ったら「漢方州」へどうぞ。かなりいいよ。
中国の影
今の日本では、格差社会の是正だなんだと言われているが、中国の格差は生半可ではない。
日本人でも高いと思う北京ダックのコース料理に舌鼓をうつ多くの人々。そこからほんの数十メートル離れたところで、道端でお椀を置いて物乞いをしている赤子を抱えた母親。華やかな建物の裏にちょっと入ればボロボロの建物。
何百元もする綺麗な洋服を着て街を闊歩する女性。1元の水が買えなくて物乞いをする女性。そんな状況は当たり前だと言わんばかりに誰も見向きもしない空気。
焼け石に水だと重々承知だが、私は彼女の椀にお金を入れる気持ちを抑え切れなかった。その端金の礼に、彼女は何度も何度も頭を下げて「謝謝」と言った。今の私にできるのはその程度だ。無力。
今回の旅で最も印象に残ったのは彼女の顔だった。
(※1) 1 元 = 約 15 円
(※2) 1 元 = 10 角