MSX との出会いは小学1年生だった。当時ファミコンが爆発的人気を誇っていたので、父親に「ファミコン買ってくれ」と頼んだら、買ってきたのが MSX だった。これにはかなりムカついた。確信犯だったからだ。
MSX はパソコンとしては安価な方だが、ファミコンと比べたら遥かに高い。当然、母親はファミコンを買い直すことを許可してくれなかった。父親は、子供のうちからパソコンに触れていたらきっと役に立つと考えていたのかもしれないが、この経験が私をパソコン嫌いにさせるとは何とも皮肉な話だ。
かくして、ファミコンを手に入れる事ができなかった私は MSX で遊ぶ事になる。いくつかゲームのカートリッジを買ってもらったが、そんなに頻繁に買ってもらえる物でもない。そして見つけたのが BASIC だった。
父親が買ったのか、BASIC の本が家にあった。まともに漢字も読めない餓鬼が BASIC なんぞ打てるわけがないが、見よう見まねで BASIC プログラミングを始めた。これが生涯最初のプログラミングになる。
しかし、やっとの思いで書き上げ、動かせるようになったゲームを保存する術を知らなかった。そもそも保存するという概念がない。なので、一度動かせるようになったら電源は入れっぱなしだ。当然、夜になったら母親に強制断線を喰らう。「たかがゲームをするのに何でこんな苦労をしなきゃならんのだ」この経験が私をプログラミング嫌いにさせるとは何とも皮肉な話だ。父親の思惑からどんどん離れていく。
そうこうしている内に、(多分)一般ユーザーが書き上げたゲームを販売している店に行くようになる。媒体は当然カセットテープだ(フロッピーディスクドライブなんてセレブな物は買ってもらえなかったし、その存在はひた隠しにされていた。バカ高いしね)。
これは非常に楽だった。カセットテープをドライブにいれて数分(あるいは数十分)待つだけでゲームができる。そして多分安かったのだろう、割と簡単に多くを買ってもらえた。今思えば結構面白いゲームが多かった。タイトルすら思い出せないし、世に広く出てたわけでもないのだろう、完全に幻のゲームだ。
しかし、データの読み込みにとにかく時間がかかる。時代はファミコン全盛期。ゲームを始めるのに数分、あるいは数十分待つのがかなりアホらしい。小学3、4年生頃には完全に嫌になって、スーパーファミコンが現れるまでは、外で遊ぶ元気な子供になっていた。
これらの経験が「パソコンウゼー!」というトラウマになって、大学に入るまで「パソコンのパ」の字にも近づかなかった。