「経営者は技術者であるべき」…そうあって欲しいですが、『十分条件である』いう持論は変わりません。
頂いたコメントのなかに、評価は「獲得した領土の再配分」であり、経営は「どうやってどの領土をぶんどる」かであるとありました。
「ぶんどる」行為には疑問があります。「領土の安堵」と解釈すれば納得できます。
第一線の技術者であり且つ経営者であり得る人は小数でしょう。ともに中途半端になるよりかは、どちらかに秀でたほうが良いと考えます。
経営=「領地の分取り」と定義するのも画一的見方だと思うのです。世にある法人は種々の形態があります。ルーチンワーク化していて、なんら意志決定が不要な安穏とした法人もあります。
しかし、働きがいとか充実感などは無いかもしれません。それはトレードオフなもので仕方の無いことでしょう。充実感より安定を望む人もいます。
未来が暗い法人や存在意義がなくなった法人もあります。それでも無理やり仕事を作って必要性をアピールして延命を図ってる特殊法人はマスコミの餌食です。
法人の在りようが違うと、経営者に求められる技量や資質は全く違う能力を要求されます。
IT会社も種々様々です。制御系開発社、科学技術計算開発社、業務アプリ開発社といった分野別に分類できる一方で、資本関係の分類もされます。大手企業傘下のIT会社、と独立系IT会社では全く異なります。
大手企業傘下の場合、親方日の丸で、口を開けて待っていると、親会社が仕事をくれるというメリットや赤字になっても泣きつける安定があります。反面、温い体質になり、不満を感じる職人も少なからず存在します。
独立系では、後ろ盾がないので、緊張感があります。これが活力になっています。
資本関係の強い法人では、親会社の出向扱いであったり、同じ組合に入らされたりします。そのうえ、給与等の待遇は親会社を超えてはならないという、暗黙の規定があったりして、IT会社とは思えない待遇だったりします。経営者といえども従わざるを得ません。
資本関係のある法人の経営者は、権限が恐ろしく制限されていて、人事権すら無いケースがあります。都度、親会社にお伺いを立てているのを見ると、哀れ感も沸きます。
「経営者=支配者」という見方は単純すぎて、実態とは乖離してます。経営者をスケープゴートにしても、構造的矛盾はなくなりません。
会社のビジョンを示せない経営者はダメだとは思うのですが、平凡な雇われ経営者にそれを求めるのは酷な場合も多いです。
Sier業者も要件定義力と作業員の管理能力は長けているのに、自社の開発力が無かったりするのはご承知の通りです。
会社の性質に見合う、経営をすれば、従業員の糊口はしのげます。経営者は、預かった会社の安定と成長を第一の仕事とするのは義務だと思うのです。(成長不要や成長放棄も含む)
自分のやりたいこと成すために起業したり、技で勝負する会社では、技術系経営者は有利です。専門分野なので意志決定も瞬間でしょう。
「作物を知らない八百屋は駄目だ」というのは一理ありますが、無知な分野は、その道の専門家を配置して、委譲するのも方策でしょう。
「鋸を使った事のない設計者」とは違う問題だと思うのです。こちらは、製造者の内輪の話であって異質と考えます。
ただし、委譲しておきながら、無知な分野に口出しすると、ワヤになります。
「その専門家を識別するには、専門知識が必要なのでは」とも言われます。機能を見極めるには専門知識が必須ですが、要件を見極めるには不要です。逆に専門知識が害になることもあります(些細なことに囚われてしまう)。
前述しましたが、経営は、発展しなくっても現状維持でも従業員の糊口の確保を大事にするのは避けられない面があります。一度雇うと、無能だけではクビにできない事情もあります。(このあたりは組合に文句があるのですが)
経営者が儲のために、社員を搾取したり、偽装や不正をするニュースは目立ちますが、数は少ない気がします。
現状維持と雇用の確保という責務のために不正に走るケースのほうが多いと感じるのです。 社会的モラルより我が社優先という我儘経営者が目立ちます。
中高年の分別ある大人がそういった行為をするということは哀れです。「近頃の若者は」という資格すらありません。
開発プロジェクトでも、実工数と請負金額の乖離や、受注後の要件変更を引き受けてしまう問題は、経営者の仕事というより、PJの仕事の範疇です。赤字ても経営的にメリットがあると踏めば、GOサインを出すこともあるでしょう。
当然、短期的には、赤字でも、将来は黒に結びつくと判断してのことですから。評価はそれを踏まえてすれば、労使とも納得するでしょう。そのはずなのに短期的赤字面だけで評価したりするからおかしな事になって、不満が溜まることになってしいます。
この場合は、PJと経営者は、理解し合って一枚板にならないと、現場は混乱します。
少数精鋭の開発者ばかりの会社は例外的で、2割の優秀技術者 3割の普通の技術者、3割の指示待ち技術者,2割のダメ技術者という社員構成の法人が多いと聞いたことがあります。このような法人の場合。
日銭が入る派遣業を行ったり、開発要員を外部に求めて、チーム編成するのを非難するのは簡単ですが、それを行わなかったら、明日の飯に困るケースもあるでしょう。
商品を知らないと評価できないのか
自分の扱っている商品知識はある程度必要ですが、深い知識や技術背景の理解は必要でしょうか。
私は、エンジンの仕組みは 2cycle/4cycle/ロータリーの区別しかできません。EGIエンジンやハイブリッドになると理解できてません。ベルト・トルコンも今一解ってません。
しかし快適に運転はできます。使い易いか、使いにくいか、居住性の善し悪しは分かります。
製品を知るとデメリットを生むこともあります。以前書いた、SeedsとNeedsの問題で、作り手のお薦め品が顧客の求めているものとは一致しません。
顧客ニーズを感じる力は、技術力とは違う能力です。
私には、吉兆の料理より吉牛のほうが美味しいです。銀座や新地のクラブより、居酒屋で飲む酒のほうが美味しいのです。(接客員に気を使ってしまうので逆に疲れます。)
商売上で必要になる商品知識は、性能知識ではなく、もたらすメリット知識でしょう。
新技術だけでは仕事が来ない面があります。
OOPやWebアプリ全盛ですが、既存のシステムの改善や、改変の場合は、旧版での開発になります。
新規案件であっても、手慣れた、旧版で確実な開発スタイルを選択することもあります。
自社開発用にフレームワークを作っている会社も多いですが、1~2世代古いケースも多いです。確立して枯れるまで数年以上要するのは不可避です。
このように、会社によって様々な背景があるので、一様に従業員や経営者、会社を計る尺度はありません。
就職した法人が自分の尺度に会わなければ、どんどん移るべきでしょう。革命を起こすのも方策ですが、同士を集めて一揆を起こすエネルギーで起業できます。
従業員も会社に不満を抱きながらも、現状維持を選ぶという選択肢もあります。革命を起こすことは、その人に多大な影響を与えることになります。
最初にどこに就職する、就職時期は何時か、旬の技術は何か、自分のやりたいことは何か、これらが一致するか、齟齬を来すかは運であり、相性でもあります。
「運も実力の内」とは言いますが、個人ではどうしようもない宿命もあります。
不思議なもので、これをやりたいと努力すれば道は開けます。私はそこに大いなる力の存在を感じるのです。精神論とは違う感じのものですが、この辺は、いずれまた。