6月19日に浜松科学館で開催された講演会「かぐやとはやぶさ」に行ってきました。
今回の講演はJAXAの坂本教授によるもので、主に月探査機「かぐや」と小惑星探査機「はやぶさ」のミッションについてのお話でした。
以下、速記からの書き起こしですが、文章化するにあたってはかなりの改変を加えています。
坂本先生の講演を聴いたことのある方ならわかっていただけると思いますが、何しろ話題が細かく飛ぶので、文章にするとえらい散漫になるんです。
いや、聴いている分にはまったく気にならないんですが。
はじめに
- 2009年は世界天文年だった。ガリレオ・ガリレイが望遠鏡を使って宇宙を見てから400年、アポロ11号が月面有人探査を果たしてから40年目にあたる。
- アポロ11号の頃、日本はまだ人工衛星すら打ち上げていない。日本が初めて人工衛星を打ち上げたのはアポロから半年後の1970年2月11日。この日「おおすみ」が打ち上げられた。
- その後も日本の研究者は様々な研究をしており、現在では世界の一線に立てるようになった。
日本の太陽系探査
- かつて、太陽系探査はアメリカやソ連が中心だったが、日本も参戦している。
- 1985年、ハレー彗星再接近の前年に日本も太陽系探査に乗り出した。日本は2機の探査機を打ち上げたが、これが惑星探査の最初である。このとき、探査機、ロケット、アンテナ、航法を試した。
- スイングバイの技術習得のため、「ひてん」を月に送った。
- 1988年、火星探査機「のぞみ」打ち上げ。「のぞみ」は火星に行くことがかなわなかったが、その技術は「はやぶさ」に生かされている。
- 2015年、水星探査機を打ち上げる予定。
いつも同じ面を向ける月
- 月の模様は各国で様々な解釈がされている
- 日本では「うさぎ」
- 中国では「カニ」
- ヨーロッパでは「本を読むおばあさん」
- 向きが変わると「女性の顔」にも見える
- それぞれの国で様々な解釈がされているが、見ている模様そのものは世界中いつでもどこでも同じ。つまり、月には表と裏がある。
- 月に表と裏がある理由は、月の自転と公転の周期が一致しているから。だから、地球から見て常に同じ方向が見える。これは地球の月に限らず、太陽系の大きな衛星はどれも同じ性質を示している。
- では、なぜこのような周期になるのか。理由は月の内部が偏っているから。起き上がり小坊師のようなもの。これは他の衛星も同様。従って、地球から見えている面は「表」と言うよりも「下」と言った方が正しい。
- 月の「上」を見るには、そのさらに上に行けばよい。ガリレオですら見ていないところを見るために月探査を行う。月探査機「かぐや」はその裏を見た。
「かぐや」について
- 「かぐや」の大きさはマイクロバスくらい。本体の他に「おきな」「おうな」を搭載していた。「かぐや」が月の裏側に回り込むと地球と通信できなくなるが、「おきな」が通信を中継した。
- 2007年に長さ53m、重さ300tのH2Aロケットで打ち上げた。
- ハイビジョンカメラで月を見てみると、水が流れたような地形があった。これは溶岩が流れたもの。
- 表にはウサギがいるが、「かぐや」が見た月の裏側には何もいない。ガサガサな地形だった。月は表と裏がまったく異なる、いびつな天体である。
- 「かぐや」は隕石が落ちた跡も詳細に調べた。地形の荒れ具合を調べることで、その地形がいつ頃できたのかを知ることができる。アメリカの「クレメンタイン」探査機よりも「かぐや」の方がきれいな絵を撮った。
- 引力の強いところは表に集中していることがわかった。
- 「かぐや」が月の裏から表に出るとき、地球が見えてくる。「地球の出」
- 「かぐや」の次では、ロボットを使って月を調べたい。5輪車や足を使ったロボットの案がある。
- 月は地球が忘れてしまった昔のことをよく覚えている。地球は空気と水があるのですぐに忘れてしまう。
小惑星と「はやぶさ」
- 太陽系には、惑星の他にも小さな天体がたくさんある。これが小惑星。太陽系ができた頃の昔の姿をとどめている。地球が忘れてしまった昔の姿を知っていると言っていい。それを探ってきたい。
- 小惑星は恐竜を絶滅させた天体である。イトカワは地球の近くを通る軌道を巡っており、地球に衝突する可能性がある。その小惑星がどんな天体なのかを知っておきたい。将来、人類が宇宙に出たときに拠点にできるかもしれない。
- 「はやぶさ」は2003年に打ち上げた。2年かけてイトカワに到着し、着陸、試料を取ってきた。そして6月13日に帰還。3tの「かぐや」に対して、「はやぶさ」は500kgの小さな探査機。
- 「はやぶさ」には通信簿がある。100点満点に対して500点を狙おうという野心的なもの。そのためにいろいろな挑戦を詰め込んだ。が、まさかすべて達成できるとは思っていなかった。最後の四角だけがまだ空いているが、これも達成できると研究者は信じている。
- 当初研究者は、イトカワにはたくさんのクレーターがあると予想していた。しかし「はやぶさ」が送ってきたイトカワの写真はまったく違った。クレーターというより、雷おこしのような天体だった。
- イトカワにタッチダウンしてから、「はやぶさ」は通信が途絶えるなど満身創痍の状態に陥った。しかし一ヶ月半で通信が回復。決してあきらめないチームの力が様々なトラブルを克服した。
- 6月13日、直径40cmのカプセルを切り離した。宇宙空間に余分に3年間いたので不安だったが、正常に分離することができた。
- カプセルを切り離すまでは「はやぶさ」に余分な仕事をさせたくなかったが、最後に地球を見せてやりたいと思った。スタートラッカーは地球を観察するためのカメラではないので画像はきれいなものではない。下の方がグレー一色なのは通信が途絶えたため。
- 最後の瞬間の運用室は非常に静かだった。川口先生の「はい、結構です」の言葉の後に最後のコマンドを送信。そして終了した。
- 現在の「はやぶさ」運用室は電源が消えており、誰もいない。「はやぶさ」の道を切らしてはならない。
エントリーカプセルの回収
- オーストラリアのウーメラ砂漠には40人くらいが入っていた。
- 非常にきれいな星空に、私たちの「はやぶさ」が戻ってきた。死んだと思ってもまた生き返る「はやぶさ」だが、さすがに大気圏突入には耐えられなかった。実に「はやぶさ」らしい終わり方だと思った。
- カプセルは光学観測の他に電波でも方向探知をする。落下予定地点を囲むように4局が用意され、電波を拾った。そのおかげで極めて短い時間でカプセルを発見することができた。カプセルは7年も宇宙空間にいたとは思えないほど非常にきれいな状態だった。
- カプセルは専用機に載せられて、ウーメラから直行便で日本に送られた。現在はX線を使ってCTスキャンなどの作業。真空が漏れると地球の成分で汚してしまうので、作業は夜を徹して行われている。
- 作業は相模原のキュレーション設備で行われる。この設備が設置されているクリーンルームは、ゴミはもちろん、化粧をしても入ってはいけない環境。地球とは隔絶された場でチリを選り分ける作業。
太陽系探査の意義
- 水星、金星、火星、月は地球によく似ている。
- 特に金星は地球と大きさがほぼ同じ。昔の姿は地球とよく似ていたと考えられる。しかし現在の金星は、大気圧が地球の90倍、95%が二酸化炭素である。猛烈な温暖化の状態にあり、気温は460℃。鉛が溶ける。
- 金星の自転は遅いが、風だけは非常に速い。地球では考えられない現象だが、金星の風を学ぶことで地球の風も学ぶことができると考えている。
- 金星探査機「あかつき」は、今年の末に金星の周回軌道に入る。
- 場当たり的な探査をしているわけではない。
- 地球の過去を見るために月や小惑星へ行く。
- よく似ているが異なる一面を持つ金星は、地球と比較するため。
- 地球と同じく磁場を持つ水星は、磁場の研究のため。2014年、水星探査機を打ち上げ予定。
- 水星を探索してどうするのかと聞かれることがある。
- 宇宙(そと)に出て初めてわかる地球(うち)
会場からの質問
- ブラックホールはあるのか。
- 間違いなくある。太陽系にはないが、銀河系にはたくさんある。
- ホワイトホールはあるのか。
- ないと思っている。計算上はあり得るが、作る仕組みがない。ホワイトホールは明るいので、それなら見えるはず。しかし、今はまだ見つかっていない。