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2010年2月23日

「宇宙農学のススメ」にいってきた

土曜日に三重に行く用事ができた(ねじ込んだとも言う)ので、四日市博物館プラネタリウムで開催された「宇宙農学のススメ」に参加してきました。
今回の講師はJAXAの山下雅道 教授。
火星での有人探査をめざすとなると宇宙で野菜畑を作る必要がありますが、そのためにはどんな要素が必要になるのか。
そんな「宇宙農学」の話でした。

以下、速記からの書き起こしです。量が多いので、まとめはパスw

参考:宇宙農業サロン


火星の水について
  • 500m、あるいは1km下には液体状態の水が存在する。
  • 1999年と2005年のマーズ・グローバル・サーベイヤーの写真を比較したところ、鉄砲水と思われる地形の変化があった。
  • フェニックスは氷の水を見つけた。
火星のメタン
  • 火星の大気は二酸化炭素が主成分だが、局所的にメタンが噴出している箇所がある
  • 地球の場合は生物学的に考えると、田んぼの泡のような微生物由来のものと、牛のゲップのような家畜由来のものの二種類がある。
  • ちなみに火星のメタンがすべて牛由来と考えると、その牛の数は10匹以下
  • 生物がいないとすると、彗星の衝突と化石としてのメタンが考えられる。
  • 彗星が衝突したとすると、もって300年くらいか?
  • 火星の地下から噴出している模様。今もじわじわと大気中に出てきている。
  • 地下には流水がある。
  • 上記二点から、生物がいる可能性がある。
火星旅行について
  • 地球と火星の位置関係の問題から、ウィンドウは2年に一回しか開かない。
  • フォン・ブラウンの計画によると、往復で各260日、火星の滞在期間は449日。ざっくり3年の長旅。
  • 有人の宇宙旅行では水、酸素、食料が絶対必要。これらを使い捨てにするか再生循環するのかの選択をしなければならない。
  • 他にもアメニティなど心理的なことも考慮しなければならない。
  • 人間が一日に必要とする水は、生活用水含めると200L、切り詰めても35L。空気は8000L(10kg)、食料は2kgが必要。
  • スペースシャトルは燃料電池のおかげで大量の水がある。すべて使い捨て。
  • ISSは一部の水をリサイクル。
  • 食料はすべて打ち上げ、排泄物は他のゴミといっしょに太平洋上で投棄処分。つまり使い捨て。
  • 月までならISSと同じ方式でいけるが、火星は無理。
心理的な問題
  • ISSでは尿を飲料水に再生しているが、心理的な抵抗が大きい。
  • 水素と酸素に分解して、再度化合させて作った水なら心理的にOK。
  • または、植物が蒸散した水をあつめたものでもOK。
水と植物
  • 植物は、2kgの食料を生産するのに200Lの水を蒸散する。つまり、食料を作れば水と酸素も調達できる。
  • 火星の資源(レゴリス)を使えば、100%以上の再生も可能になる。
  • 土(ソイル)は土中微生物も含んだ概念だが、火星の「土」には微生物がいないので、レゴリスと称して区別している。
超高温好気性堆肥菌生態系
  • 超高温好気性堆肥菌は、日本が持つ特色ある技術の一つ。
  • 通常の堆肥菌は50~60℃で活動するが、超高温好気性堆肥菌は100℃の高温で活動する。
  • 超高温好気性堆肥菌の処理能力は非常に高い。家庭ゴミ程度の生ゴミなら、4時間あれば十分に処理できる。
  • 人間は大量のナトリウムを排泄するが、これは普通の植物にとっては毒。ナトリウムを回収するために海藻を使う。
  • 超好熱好気性堆肥菌による生態系を考える
  • イネを育てて食料を得る。
  • クワを育てて、カイコの餌とする。
  • 樹木を栽培し、余剰の酸素と木材を得る。
  • 昆虫を食べて衣料を作る。
  • 海藻や耐塩性植物でNa問題をクリアする。
有機農業野菜について
  • 堆肥にバクテリアが付着しているので、収穫後の洗浄が必要。
  • 見てくれも良くない。
  • 収量も多くない。
  • 実は全然エコじゃない。
  • 100℃程度の高温でなら殺菌が可能だから、この高温で活動する超高温好気性堆肥菌を使えば、上記の問題がすべてクリアできる。
繊維と非常食
  • クワの木を育てて、余剰酸素を得る。そして、カイコの餌とする。
  • 名古屋女子大学の片山先生によると、非常食の貯蔵方法として繊維を利用する方法がある。
  • コットンは砂糖に、シルクはアミノ酸に変換することができるので、非常食になりうる。
  • この辺は東アジアの得意技。
食料選択
  • 宇宙農学では、効率よく必要エネルギーと栄養素を取得できなければならない。
  • コメ、コムギ、ダイズ、ソバ、キヌア、ジャガイモ、サツマイモ、キャッサバについて、作付面積あたりの収穫量、作付け期間、摂取エネルギーなどを調べた。
  • コメはコムギに比べて、単位面積あたりの収量が約倍。
  • 作付け期間も短いので、コメはコムギの約3倍取れると思っていい。
  • ただしこれは、肥料、品種改良、農薬による。これらは収量を増やすために必要。つまり近代農業の勝利。
  • さらに、コムギは食べるのに手間がかかる。収穫したら粉に引いてこねて、焼いて、パンにする必要がある。
  • コメは脱穀したら炊くだけで食べられる。手間がかからないのは大きなアドバンテージ
  • ソバは必須アミノ酸をすべて取ることができる上に、荒れ地でも育つことが特徴。しかし、収量が少ないのが難点。
  • サツマイモはジャガイモよりも全体的なスコアが高い。しかも、甘いのがポイント。宇宙では、甘味を調達することは難しい。
  • アフリカのキャッサバは毒があり、野生動物が食べられないのが特徴。人間は毒抜きの方法を知っているので食べることができる。収量が非常に多いが、作付け期間が長い。
火星での平均的な一日の食材
  • コメ 300g
  • ダイズ 100g
  • サツマイモ 200g
  • 緑黄色野菜 300g
  • これだけではビタミンB12が足らない。ダイエット目的のにわか菜食主義者が病院に担ぎ込まれる最大の原因はビタミンB12不足。女性の場合、生理が止まったりする。
  • さらに、動物性脂肪も足らない。免疫系が落ちる。
  • カイコのサナギ 50g
  • ドジョウ 120g
  • 塩 3g
  • カイコを毎日50g食べ続けると、一年で衣服一式をそろえることができる程度の絹が得られる。
日本の貢献
  • カイコとコメは日本が古来から持っていた技術。
  • 現在でも、天皇がコメを収穫し、皇后がカイコの繭から糸を紡ぐ行事がある。
食材としてのカイコ
  • 昆虫はエビやカニと進化の系統樹が近く、味もよく似ている。
  • 人類がこれまでに家畜化した昆虫はカイコとミツバチの二種。
  • カイコは韓国ではポピュラーな食材。どこのコンビニに行ってもカイコの佃煮の缶詰を買うことができる。
  • 中国ではサソリや蝉の幼虫と同じように、吊しで売っている。
カイコのクッキー
  • コメ、ダイズ、サツマイモ、カイコが原料。
  • コメは甘酒に、ダイズはおからにして使用する。
  • おからはNASAの用語集にも入っているが、食べ方は知らないらしい。豚の餌だと思っている。
ドジョウ
  • 魚は内臓ごと食べる。植物素材で取れない栄養素は、ほとんどが内臓にある。
  • そこで、ドジョウを考える。
  • 韓国にはドジョウの鍋料理がある。
  • 栄養学的に足らないものがあるが、豆腐を入れれば完璧。
宇宙で酒造
  • 日本人としては、酒を飲みたい。
  • 技術的には、あり合わせの食材で酒を造ることは十分に可能。
  • 今のところ、宇宙へ酒を持っていった国は公式には存在しないが、もしかしたら日本が一番最初の国になるかもしれない。
  • ISSでの料理は、ただ混ぜるだけ。しかし火星では、もっと料理を楽しめるかもしれない。
Q&A
コメやサツマイモなど以外に、有利な植物はないのか。たとえばトウモロコシは?
トウモロコシは強い光が必要。火星での日光は弱いので、トウモロコシを育てるのは厳しいかもしれない。
家畜動物を連れて行くことはできないか
牛や豚を連れて行くことは非常に厳しい。人間を持って行くだけで精一杯なのが実情。その点、カイコは卵が非常に小さく、サナギの状態になると1万倍にふくれあがる。卵の状態での保管技術も確立しており、火星に持って行っても孵化させる自信がある。
ISSでは酒を造っていないのか
作っていない。イーストを持って行ったことはあるが、持って行っただけ。これを地球に持ち帰ったものを使って作った酒はある。
水以外での生命のつながりは?
生命の定義にもよるが、絶対にないとは言わない。しかし自分自身の構成要素を作るためには水と空気が存在していた方が絶対的に有利。特に、水の性能は非常によい。ケイ素生命体を考えられるが、やはり難しい。分子機械を考えると、炭素と水の組合せが必要になる。ただし、これが唯一ではないと思う。
他のメニューはないのか
たとえば豆腐ハンバーグなど。コメとダイズは様々な形に加工することができるので、メニューは千差万別。
観望会でのぶら下がりにて
  • 動物を連れて行く余裕ができたとして、一番最初に連れて行く動物は何かと聞いてみた。答えはおそらく愛玩目的のものらしい。閉鎖環境、長期間代わり映えしないメンツという状況では、クッションになる動物がいるよねー。
    • 青森の閉鎖環境実験で使ったように、ヤギはどうかと聞いてみた。それでもやっぱり愛玩用の方が優先度が高いっぽい。もとより家畜動物はエネルギー効率が悪すぎるし、餌が人間とバッティングしないことも重要だし。
  • 無重力状態では、ミツバチは飛ぶことができない。そこで1/6あるいは1/3の低重力状態で飛べるか否かについて2月はじめに実験をした。結果だけ聞き出したけど、たぶん論文になるだろうからここでは伏せておく。
    • 余談ながら、無重力を作る施設(というか飛行機)はNASAをはじめとしていくつかある。が、低重力状態を作ることができるのは日本だけだそうな。で、その飛び方は特許なんだとか。
  • ISSにシャワーはない。体を洗浄する方法は濡れタオルで拭くだけ。スカイラブやミールにはシャワーがあったけど、カビが繁殖しまくった。特にミールはカビでぐちゃぐちゃになり、最終的には閉鎖したんだそうな。
    • ところがミールのカビがオークションにかけられ、勇敢な宇宙飛行士が飛び込むことに。研究素材として非常に重要で貴重なのはわかるけど、なんというか、合掌。
  • 高温好気堆肥菌の処理能力は半端じゃなく高い。人体の処理も余裕で可能。骨だって消滅させられる。しかし髪の毛の処理には時間がかかるらしく、2、3日はかかるらしい。爪も若干時間がかかるが、髪の毛ほどではない。
    • 宇宙時代には、葬儀の仕方を考える必要があるかもね。というか、遺体処理ってすごく重要。
    • 遺体の処理に昆虫を使うという案がある。遺体でウジを育てて、そのウジを食料にするというもの。しかし、心理的抵抗が大きすぎる。
    • ならばウジを魚の餌にして、その魚を食べるという案もある。こちらは心理的抵抗は少ない。
  • 火星で植物を栽培するには温室を使う。意外にも、火星の温室は地球のものとほぼ同じ環境を再現できるのだそうな。
    • というのも、火星の大気圧は地球の100分の1以下なので、大気の熱伝導による冷却がほとんどない。あるのは放射による冷却だけだから、魔法瓶の中にいるようなもの。気温を維持することはたやすい。
    • さらに、火星大気中には二酸化炭素がなんぼでもある。水だって大量にある。火星は、意外と農業をしやすいのかもしれない。
2010/2/23 13:00 追記
観望会の時に火星で温室を作る話を伺ったことを思い出したので追加。ついでにぶら下がりの部分をテーマごとにまとめた。

posted @ 8:46 | Feedback (5)