転職情報サイトに登録しているのですが、毎週のように、ある会社の求人情報が流れてきます。その会社、設立から3年ほどなのですが、収入モデルとして、「35歳(入社13年)」というモデルがあります。う~ん?
それはいいや。
入社希望者へのメッセージとして、「経験がなくても安心です。OJT により、トレーニングします。」のようなことが書かれています。
On the Job Training って、本当に効果があるのでしょうか?
ここで、なぜ、このような疑問を持ったのかを説明しなければなりません。この会社、そしてこのようなことが書かれている会社のほとんどが、派遣、または客先常駐型の請負会社である、というところです。
実際の仕事をしながらトレーニングする。会社側、社員側、どちらにも都合がいいように解釈できます。また、日本語で、「実際に仕事をしながら学ぶことが出来ます」と書かず、英語で、しかも OJT と頭文字だけで書くところが、また、会社側に都合がいいところだと思います。
OJT とは、On the Job Trainig、すなわち、「仕事をしながら訓練をする」「実際の仕事によって訓練する」ことです。OJT という訓練プログラムがあるわけではなく、実際に仕事に当たらせます。このことを知らず、応募者が「へぇ~。訓練プログラムのある、いいところなんだ」と思ってしまえば、企業にとってしめたもの。ポイポイ仕事に放り込めます。
しかし、OJT が本当に効果があるのなら、それはそれでいいでしょう。しかし、実際にはどうなのでしょうか。
前提条件。派遣や、常駐型請け負いの会社において、です。
私は、効果がない、あるいは、効果につながりにくいと思っています。
最近、雇用形態として、派遣や常駐型請け負い、プロジェクト単位のヘルパーが増えています。なぜ、こういう雇用形態が増えているのでしょう?企業が人件費を減らし、利益率を上げるためです。
どこかの政党が「雇用を増やして(サービス)残業を減らせ」と訴えています。しかし、企業にとっては、そんなに簡単に雇用を増やせるものではありません。
人を一人雇ったときに発生する費用は、その人の給与だけではないのです。正社員として雇った場合、給与の他に、年金や退職金、失業保険、健康保険といった費用が、企業には発生します。その他、福利厚生や、健康診断、社員教育にも、費用が発生します。また、日本古来の「終身雇用」はまた、その人だけでなく、その人の家族の生活をも、ある程度企業が面倒を見るというものでした。
しかし、契約社員であるなら、そういった費用・責任は契約者の負担となります(ある程度、上乗せはする)。派遣や常駐型請け負いであれば、派遣元の会社が負担します(派遣会社に契約社員として雇われる、という雇用形態もある)。
つまり、「毎月 160H の残業があるんだから、一人雇っても仕事はあるでしょ」というのは、仕事量だけ見れば正しい。でも、仕事があっても、利益があるかどうかは、わからないのです。利益がなければ、雇い入れることは出来ないのです。
というわけで、契約社員、派遣、常駐型請け負い(以後、まとめて「派遣」)では、労働者が長くひとつのところにとどまることは、あまりありません。
「派遣において、ひとつのところに長くとどまることは、あまりない」という前提で、OJT の効果を考えます。
派遣を受け入れる会社にとって、派遣されてくる人は、即戦力となる人物であって欲しいのではないでしょうか。このプロジェクトだけ。このプロジェクトの、この期間だけ、人が足りないからいて欲しいです。このとき、教育から始めなければならないのなら、足手まといなだけです。別の言い方をすると、教育している暇はないのです。
教育している暇があるとして。せっかくあれこれ教えてたところで、「それじゃ、契約期間が終わりましたから~」と引き上げられたら、それはそれで困りものです。まったくコストをかけずに教えられるわけではないのです。教えるだけ教えて、「さぁ、使おう」と思ったとたんに「ハイ、さようなら」では、企業側はとても困るのではないでしょうか。
だとすると、こういったところでの OJT は、今の急場がしのげればいい、という内容になってこないでしょうか。
そして、そういう急ごしらえの教育に、はたして効果があるのでしょうか。もちろん、今の急場をしのぐ効果はあるでしょうけど。
On the Job Training... 聞こえはいいですが、言い方を変えると、「教育プログラムを用意できないから、実戦で学んでよ」ということではないでしょうか。その場その場で、場当たり的、対症療法的な教育…もとい、指示がされるだけではないでしょうか。指示は教育ではありません。トレーニングにはなるかもしれませんが。。。
・・・というようなエントリを用意していたら、Mooさん経由で興味深いエントリ発見。→IT トレーニングの意義とは? from 高添はここにいます
そして皆さんにも考えてもらいたい。
IT業界では、Education (教育)が必要となれば「じゃあTraining (トレーニング) をしよう」という話になることが多い気がするが、皆さんの会社でやっているトレーニングは、情報提供でしょうか、それとも人材育成でしょうか、それとも。。。
Education(教育)なんて、そもそも行われていない...
教育を行おうとすると、まず、方向性が必要になると思います。例えば、高添さんの場合、高添という人が介在する価値は単なる情報に意味づけをして伝えること
が相当するでしょう。そしてこの意図は、話のテーマがどの様に変わっても、変わったりしないのではないでしょうか。
しかし、こういう方向性が用意できている教育の機会というものは、ほとんどないと思います。高添さんが話をされた方も、その時々で「テーマ」を作り、その「テーマ」に沿った情報提供をされているのではないでしょうか。そして、「テーマ」に共通したメッセージはない、のではないでしょうか。
「少年老い易く学成り難し」
「学ぶための時間」というのは限られていて、その時を逃すと、学べないわけではないが、“その時”に学ぶ以上の労力を必要とする、と思います。
実は、数年前に通信制の大学に編入したのですが、「スクーリング授業が8月に集中しており、期間の変更も出来ず、履修が困難」「離職して、収入が不安定になった」「第二子が生まれ、何かと物いりになった」というような理由で、卒業せずに退学しました。「大学生」といわれる期間に大学生をしていれば、普通に卒業できたはずです。“その時”を逃したために、“その時”以上の労力が必要となり、その労力がまかなえずに学ぶ機会を逸したといえるでしょう。
同じように、様々な物事には、その物事を学ぶのに適した時期が存在すると思います。その時期に適切な教育を受けられないと、後から学ぶのは、大変な労力を要求されるでしょう。
反対に、教育を受けさせるのには、それに適した時期がある。その時期を逃すと、大変な労力(コスト)がかかるでしょう、、、ともいえると思います。
ただの情報提供、ただの指示。それは、提供者のその場の意図を伝えるだけです。教育に必要なのは、これから先の判断や選択の基準となるものを与えること、ではないでしょうか。
投稿日時 : 2006年4月19日 6:30